虚空 第三章
第三章       第一の伝説
 
次ぐ日、「まったく、おっせーなー」といつものようにぼやく俺、「まあ女ハンター
だからおおかた髪をセットして防具つけて化粧してるんだろ」と遅刻しているアリス
とミリアを待っているにもかかわらず冷静なロードス、まあ歳だから待つ事に馴れて
いるんだろうが・・・「まあまあ」となだめるドレイク。といつものように待つと20
分遅れでやってきた。「ゴメーン、髪セットしてたら遅くなっちゃった」といつもの
ハイテンション気味で言うアリスとミリア。「いいから早くレウス狩りにいくぞ」と
いい火山へとやってきた。クーラードリンクを一気に飲み干し、肉にかぶりつき火山を
登る。そうしているうち溶岩がたくさん流れるエリアにてレウスを見つけた。「さて狩るか」
村で待たされたせいか、意気消沈だったがすぐ戦闘態勢になる。アリスの弓が素早く飛び奴の
首へとヒットする。さらにミリアのハンマーが脳天を襲う、くらくらしているところに
ロードスの大剣が尻尾を吹き飛ばす。瞬時に鬼人切りを胴体へと喰らわす俺。
ドレイクは双剣の乱舞を頭に連続ヒットさせる。だが奴も負けておらずアリスへと火を吐く、
だがアリスは気付いていない。俺はアリスに声を掛けるも返答なし、残り数mまで近づいたところで
気付くも遅く俺がアリスのための盾となりレウスの火に当たる。背中が焦げる、途端にアリスは俺に駆け寄り
緑色の煙を発した、そう感じたところで意識を失った・・・
 
気が付くとテントであった、あの緑の煙はモドリ玉といって自然の加護を応用
した道具で着弾点から一定の範囲内に加護による煙を撒き散らしテントへと
運んでくれるすばらしい道具だが値は張る代物だ、それに身体は十分に冷やされ
包帯ぐるぐる巻きの身体だった。近くにアリスが泣きながら俺の手を握っていた
「大丈夫、私のせいでこんな事になってごめんなさい。」「もしかしてこの手当て
は君が?」「そうよ、無我夢中だったから下手かも知れないけど・・・」
「そんな事無いよ、楽になったから俺は戦場に戻るよ・・・」「ダメッ!酷い
火傷なのに行っちゃ駄目、だってあなたの事が出会った時から好きなのに失いたく
ないの、お願いだから行かないで・・・」泣きじゃくるアリスに俺は抱きつき
「傍から離れないから、ゆっくり休んで」と声を掛けてやると「わかった」
といい寝てしまった、暫くして、ミリア達が戻って来た・・・
 
俺は気になっていた事を口にする。「レウスは、狩ったのか?
それとも傷を癒しに来たのか」と聞くとミリアは二ッ、と笑顔を浮かべる。
その瞬間全てを悟り会話が続く「あれっ、アリスは?」「そこで寝ているよ、
俺の手当てに必死で疲れたらしい。」「そうなんだ、まっ、村に帰ろう」
無邪気に言うミリアに賛同し馬車へとアリスをおぶり寝かせ村へと揺られていく
帰る途中にアリスは目を覚ます。第一声が「ロベルトは大丈夫?」だったことに
俺は胸を打たれる。その時俺の身体に雷電が走ったような感覚が襲った。
「なんだこの感覚は・・・」と思わず声に出してしまうほどだった。
その感覚が恋だと知るのにそう時間はかからなかった。彼女はその気が
あるのはテントでの会話で分かっているが、どうプロポーズしたらいいものか
分からないでいた・・・村へと着くとなにやら騒がしい、村長に聞くと「大変
だよロベルト、ラオシャンロンがこちらへと向かっているらしい。2日後には
村を踏み潰すようなルートであるらしい。すぐさま受注し、砦へと向かった・・・
 
砦に着いた俺が最初に見たのは山以上のでかさを誇る砦だった。
まあ相手が山くらいだからしょうがないといえばそれで終わりなのだが・・・
時折地面がものすごく揺れるのはラオが近づいているからだろう
他のものはもう行ったらしく俺たち5人しかいない。時折戦死した者が
運ばれているのをみたアリスがトイレに駆け込み吐いて戻って来た。
「よし俺たちもラオ退治に行こう」とアリスを見ながら言う俺にアリスは
「行くわよ、戦死した人の弔い合戦よ」と俺を見ながら言う。走り出し
ラオへと向かうその時、何かが起こる、そんな胸騒ぎを感じていた・・・
 
到着すると惨たらしい戦場であった。なんとラオは無傷といえる位の姿で
出て行ったハンターたちを亡き者にしその死骸の地面を悠々自適に
進行している。耐え切れずアリスはスミに行き吐いていた。そのアリスの
背中をさすりながら「駄目なら君だけでも帰っていいんだよ」とやさしく
声をかける。アリスは涙目で俺を見ながら「大丈夫、平気よ戦えるわ、
吐いたら楽になったし、そしたらあいつに対する怒りが爆発しちゃったわ」
という。明らかに虚勢を張っているのはみえみえだが彼女の意思を無には
出来ないので一声「危なくなったら君だけでも逃げて」と見つめながら
いうと「分かった」と答えた。そして5人でラオに真向きになり戦闘
体勢になりアリスの矢が片目を射抜く、悲痛の叫びを上げるラオにロードス
の溜め切りが顔面を襲う。角は折れ吹き飛び血が滴り落ちる。それだけで
終わらずミリアのハンマーが顔面の甲殻を砕き水流が襲う。さらにロードスが
雷を落とす。水の加護との相乗効果で威力も上がり。さらに傷口ともあって
相当痛いだろう。だがその時胸騒ぎが最高潮に達したとたんに悪寒が走った・・・
 
そういえばドレイクは?と思い見渡すとラオの尻尾の方で切っている。
特に尻尾は硬く、弾かれて危険に陥ることも少なくないのにその危険地帯
で戦うことはいくらベテランであろうと「死」を意味する。瞬時に真剣さを
込めた目で「ドレイク、そこではなく腹を狙え」と叫んだ。ドレイクは気付き
腹に潜り込もうとした瞬間樹齢3百年以上もある大木の如き尻尾でドレイクは
打ちのめされ、壁に叩きつけられる。その時戦っているアリス達に一旦引くよう
に言いドレイクに駆け寄る。「ドレイク、大丈夫か?」と安否を問うと「その
・・声・はロベ・・ル・トさん・・・で・すね。もう・・・私は・・駄目な・・
ようです・・私に・・は・妻も・・子供も・いない・・・ので・ロベルトさん
・・どうか私・・・の・・腐食・の加護を・・受け取って・・あいつを・・
ラオシャンロン・・を・・倒し・・て・下さい。」というとドレイクは手を
握ってきた。俺はそれを握り返しドレイクの目を見る。途端に手から何らかの
力が入ってきた。俺はそれを受け入れると。「大丈夫だ、きっと奴は倒すよ」
と声をかける。「あり・・がとう・私は・・いつ・も・・あなたの・・傍に
・・居ま・・すから・・時折・・私に・・心で・・離して・・下さい。」
「ああ分かった、分かったからもうしゃべるな」と言った矢先。ドレイクの
唇がありがとうと発しようとして途切れた。それきり動かなくなった。
死体を担ぎ砦へと戻った。このことをどう皆に話したらよいか考えながら・・・
 
砦へと戻るとアリス達が戻ってきていて各々傷を癒し次の出撃を待っている。
「皆、聞いてくれドレイクがラオの尻尾に巻き込まれて死んでしまったんだ」
と涙目で語ると「嘘っ、嘘よねドレイク目をあけてよ、いつもみたいに
フフフって言いなさいよ、勝手に死なないでよ5人いてのパーティーだったのに
ウザイと思ってたけど見直して着てたのに・・・このバカ」とドレイクの頬を
叩きながら言うアリス。「信じがたいけど、真実なんだ受け止めるしかないよ」
「だけど」と反論するアリスに「それよりドレイクを殺したラオを殺すことが
何よりドレイクのためになるんじゃないのか」と強い口調で言い、「嫌なら
残るといい、君は死んで欲しくないから。俺の大事な人だから・・・」最初の
方は強い口調でアリスを見ながら言ったものの、後の方は小声で目をそらしながら
言った。「俺の何?」と追及するアリスに「どうでもいいだろ、まずはラオを
倒すことが最優先事項だ」といいラオへと再び対峙する・・・
 
ラオは前回の戦闘でボロボロになっているにもかかわらず、進行を止める
気配は無く猛進している。皆に下がるようにいい、ドレイクより受け継いだ
腐食の加護を全開に引き出し地面へと撃つ。瞬く間に地面はえぐられ
渓谷を作り出す流石に力を出しすぎ倒れる、だがミリアの水の加護による
癒しですぐに立ち直る。ラオは足を渓谷に踏み入れる。そこで今度は大地の加護
を使い地面に足を埋める。ラオほどの力をもってしても抜けることはたやすくない
ここぞとばかりに俺の鬼人斬りが閃く。だが俺の切り方とは違って、甘さの無い
プロの斬りが出ている。「ひょっとして、ドレイクなのか」と心で唱える。
「フフフ、そうですよ私です。私の剣技を受け取って下さい。名を「天地雷鳴
の閃き」という剣技です。その他にもありますが、それは後ほど」と言うと
我に帰りラオを見ると血で真っ赤である。よろめいている様子からあと
少しで倒れるであろう。最後に俺は大地の加護で高い塔のような物を作り
その上から「ラオよこれでおわりだー」と叫び腐食の加護を纏わせた刀を
脳天へとヒットさせる。途端に切れたところは腐りラオは耐え切れず昇天した。
「いっちょ上がり」と決め台詞を残しアリス達のもとへ戻る「酷い、私たち
にもドレイクの敵討ちさせて欲しかったな」と駄々をこねるアリス。
「とりあえず村に戻って埋葬だドレイクを一刻も早く眠らせてやりたいからな」
そうして村へと帰還する。この後に起こるハッピーな出来事と驚きを知る由が
無かった・・・
        第三章 第一の伝説  完