虚空 第六章
第六章       聖五龍とそれを統べし三神龍
 
そんな事とはつゆ知らず、村へ帰った後G級昇格に酔いしれ宴会を
行なっていた。「G級昇格万歳」と歓声が上がり、やんや、やんやと
祭り上げる集会所のハンター達に嫌気がさしながらも宴会を楽しみ
休息を取ることにしその日の太陽が霊峰ヴェリシアに沈みかけるころに
床に着いた。その次ぐ日に起こる危険な狩りを知らずに・・・
 
次ぐ日、皆と合流した俺たちはG級ハンターに認められている特権
パーティー名を付けることが出来ることで考えていた・・・
「希望への翼が一票、オーバードライブが2票、残りの票が
レクイエム!ということでレクイエムに決定!」
パーティー名が決まったところで早速狩りに行こうとしたとき
ギルドからの早アイルー(速達のようなもの)が来た。
「ロベルトさんですかにゃ」「そうだが何か?」
「すぐシュレイド城に向かってくださいにゃ、大変な
ほど強い新モンスターの龍が5匹もシュレイド城に巣を
作っているのですにゃ、あの城は下に虹色鉱石の鉱山がある
主要都市なのにゃ」「分かったすぐ行こう」「頼むにゃ」
受付嬢に告げて城へと向かった・・・
 
城の中ではもう戦が始まっているらしい。轟音がここまで響いてきている。
城の中に駆け込むとその中には一人のハンターが5匹の龍と戦っていた。
他のハンターはいない、そんな中一人戦う女ハンターがいる。良く見ると
装備はナルガクルガだった。防具から垣間見えるは頭から生えているらしい
耳が腰の辺りからは尻尾が生えている。その耳と尻尾は狼のものだった。
いつだったか聞いた事がある。獣人族の中には人間と変わらないが
耳と尻尾の生えた牙狼種というものがいるらしい。人間と変わらないと
いってもその特有の耳でかすかな音も逃さず聞きとり狙った獲物は
逃がさないという。「俺たちも加勢するぞ」と怒鳴り間に入る・・・
 
「ありがとう」とそいつは小声で呟き5匹を囲う感じで陣を取る。
5匹の神々しき龍は突然の参戦に驚き体勢を立て直す。
見れば、ガナイトガン、ダダヴァオ、バンダラナ、ダンザー
そしてミラフォルスだった。
そいつらも戦闘態勢を整え牙をむく、「散開して各個撃破を
挙行する」「了解」と陣形を決め散開する。
奴らも散り始める、一点攻撃で決めるつもりだろうが・・・
「おぬしらも村人と同じなのか?同じように私を否定するのか?」
「そうじゃない、出来れば戦いたくは無い」
「そうなのじゃな、では信じよう。村で待っているぞよ」
とガナイトガンは飛び去ったものの他の奴らは仲間を取られた
と思い咆哮をし怒り飛びかかろうとする。
その時一陣の風が吹いた気がした・・・
 
その風は良く見れば戦っていたあいつだ牙狼種特有の獣人種一
の身体能力で駆け回っている。武器は双剣に似ているが輪のような
形状をしている。俗にサークルブレイドと謳われる物だろうがそれを
二つも持ちあの動きの中に攻撃を取り入れている。
時折何かを呟いているが何故だろう。
こうしてはいられないと攻撃を開始する・・・
 
いつものように連携攻撃を繰り出すもののすべて避けられてしまう。
「思ったより分析能力と知能があるらしい、皆油断はするなよ」
「承知」といつもとは違う連携を繰り出す。いくらなんでも
色々とパターンを作らない攻撃で翻弄しミラフォルスを倒す事に
成功する。だがダダヴァオの四本の腕と肋骨で
出来た羽で飛んで避けつつ攻撃されるため届かない。
「ぬしよ大地の加護で丘を作ってくれ」
と不意に声をかけられたが言われたとおり丘を作った。
あいつは丘を一気に駆け上り飛び降りようとした瞬間
シルフィーナに何かを告げる。飛び降りたとき異様に高く飛び上がり
かなりの速度でダンザーに襲い掛かった・・・
 
「ザシュ!」という音を立てて真っ二つに切れるダンザー。
怒りに震えるダダヴァオとバンダラナが咆哮を二つ三つと
かき鳴らす。特にバンダラナは宿敵を倒されたせいか特に
怒り方が激しい。だが冷静さを持っている俺らはがむしゃらに
攻撃してくるダダヴァオとバンダラナは周りなど気にもしない
そんな中俺らは計略を伸ばす。俺が壁を作り囲んだところに水を
流し込み風でかき混ぜ雷を流す。さらに水を消し肉体を焼くに足る
炎が奴を襲いさらにあいつのサークルブレイドが舞うように斬る。
そうして3日にわたる激闘の末5匹(実質4匹)を倒し村へと
帰ろうとする。その時「ぬし様よちょっといいかやわっちは
フィアミラ=ホロと申すものなんじゃが仲間に入れてくりゃせんか?」
と聞いてくる。確かにこれだけの知略と戦力を逃すことは無いと話し合い
で決め「いいよ、ただし死ぬなよ」「ぬし様は優しいお方じゃのう、
惚れてしまいそうでありんす。わっちの事はホロと呼んでくりゃれ」
その時背後に悪寒を感じた…
 
その感じは俺の身体に警鐘を鳴らす、避けろと。
「皆横に飛べ」叫んだときにはホロはもう避けていた・・・
皆が横に飛ぶ。間一髪のところに流星群と光の玉が降り極め付けに
氷の塊が転がってきた。「これは神王龍ナルポロリウスと流星龍
レクシエム、さらに氷神龍メビウスが立っていたのである」
恐怖のあまり身体が弛緩する。「皆、逃げるぞ」と声をかけた時には
もう皆駆け出していた村へと戻り事情を説明した…
  第六章 聖五龍とあおれを統べし三神龍
         完