一部 四章
 四章 伝説の黒龍
 
一週間、休養した俺は村に帰った。村に帰るとヘレンが温かい
スープを作って待っていてくれた。スープを飲み終えた俺は、
集会所へと向かった。何のクエストを受けようか、と選んでいると
一人のハンターがクエストから帰ってきた。骨となってだ...
「何があったんじゃ?」とギルドマスターが骨を連れ戻ってきた
傷だらけになったハンターに訪ねた。「や、奴が現れた....
黒龍ミラボレアスがな。何とかシュレイド城に追いこん
でやったが時間の問題だ。このままじゃここにくる....」
そう言い残し気を失った。「た、大変じゃ....すぐに近くの
村や街に伝えるのじゃ!一刻を荒そう事態じゃ!村人に
避難勧告を出し、腕の立つハンターは黒龍討伐に名乗りを挙げてくれ!」
だが、誰も名乗り出ない。.......俺以外はな。「頼んじゃぞ....ジャック。」
自宅に戻った俺は道具の準備するとともに、心の準備をする。
ヘレン達には伝えない。彼女達はこんな所で死ぬのは早すぎる。
俺はこの村の為、ヘレン達の為なら命も惜しくない。そして静かにこの村を出る。
心の中で呟く。「ヘレン....君はとても美しかった。今までありがとう。幸せに......な。」
 
村を出てから約三日間、俺は黒龍目指して歩き進んでいた。
「黒龍。お前を必ず討伐し、村をヘレン達を守る。命を賭けてでもな.....」
そう呟いていると、目的場所の【シュレイド城】が見えてきた。
そして奴はあそこにいる.....そう思うと緊張してくる。決戦の前に腹を
満たす。次の瞬間!辺りに黒龍らしき叫び声が響き渡った。
「何だ!?誰か戦っているのか!?」俺はシュレイド城に走り出す。
そこには見覚えのあるハンターが黒龍と戦っていた。それは........
ジャンだ!「ジャン!?何故ここに!?」と近寄り加勢する。
「ジャック!お前こそどうしてここに!?」その姿は傷だらけで、
今にも倒れそうだった。「おい!いったん引くぞ!その体じゃ満足に
戦えないだろ!」「くっ!分かった。一度退こう。」俺達は
拠点に向かって全力で走り出した。黒龍に背中を向けた時、俺は
絶望と恐怖を感じた............
 
俺は黒龍に向きを変え、とっさに大剣を盾にする。
何故俺がその行動を行ったのか、自分でも分からなかった。
盾にした瞬間、邪悪な火の塊が大剣にぶちあたる!俺は
後ろに吹っ飛んだ。危なかった。もしもあれを大剣で
受け止めなかったら今ごろ灰にされていただろう。後ろから
「大丈夫か!無事なら走れ、又来るぞ!」とジャンが言ってくる。
俺は今度は横に転がり奴の邪悪な火の塊、俺達ハンターはブレスと
呼んでいる物を回避する。死が影のように付きまとってきて、
恐怖が心の中で生まれる。奴の攻撃を何とか、かわしながらついに拠点に
到達する事が出来たのであった........
 
拠点に着き、俺はジャンの手当をしてやる事にした。ジャンは
ガルルガシリーズで身を守り、武器は【双龍剣】と言われる物を
使用している。ちなみに俺はクシャルシリーズを身に付け、この謎の大剣、
名前は【封龍剣・滅一門】と言うことをジャンに教えてもらった。
「ジャン、傷大丈夫か?」「大した事はない。だが、奴は半端無く強い。
砦蟹や老山龍など比じゃないほどの破壊力を持っている。最悪一撃で死ぬ恐れもある。」
「そんなに破壊力を持った龍か......どうやって戦う?」
「落とし穴やシビレ罠は全く聞かない。閃光玉もだ。奴の動きを封じる術はない。」
「....ここにはバリスタと大砲と撃龍槍が有るよな?この俺ジャック様が
気を引いといてやるからそれで弱らせとけ!」「へっ何がジャック様
だよ......頼んだぜ。兄貴....」兄貴?確かにジャンはそう言ったような....気のせいか。
今は黒龍を討伐する事を考えろ。そう自分に言い聞かせる。
そして俺達は邪悪なる覇気を出している、黒龍に立ち向かっていった.....
 
まず俺が先頭に立ち、黒龍の周りをちょこまか動きまくり
奴の気を引く。とそこに「ドゴォォォン!!」と発射音が鳴り響く。
そして黒龍に黒い塊が当たり、爆発する。大砲の玉を撃ったのだ。
「ギャオオオオオン!」黒龍が怒りのバインドボイスを辺りに響かせる。
とっさに耳を塞ぎ、硬直してしまう。これはどんなに熟練ハンター
でも起こってしまう行動なのである。逆に起こらない奴の方が異常だ。
黒龍がこちらを向く。ヤバい!早く動け!と必死に体を動かそうとする。
間一髪の所で体が動く。直後、そのすぐ真横で黒龍の巨体がうつ伏せに
倒れ、下に俺がいないと気づくとすぐに起き上がりこちらに向き直る。
危なかった。もしあれに巻き込まれたら、圧死されていただろう。
ジョンが次の攻撃を行う。バリスタだ。ジョンが放ったバリスタは
黒龍の羽に当たる。のにも関わらず、黒龍は平気そうにしている。
「こいつ.....間違いなく今まで戦っていた中で一番強い.......」俺はそう確信した。
 
だが俺達は怯む事無く攻撃を喰らわせ続ける。だが黒龍
に致命的ダメージを与えられてない。このままじゃ勝てる確率は低い。
そう思っていた時だった。視界の隅に最強の兵器【撃龍槍】が見えた。
そうだった。あれを使えば幾ら黒龍でも無傷でいられる筈がない。
「ジャン!撃龍槍だ!俺が誘い出すから、ジャンが撃ってくれ!」
「あぁ!任せとけ!」ジャンが撃龍槍に走り出す。そして俺は上手く
黒龍を牽制しながらゆっくりと撃龍槍の前に誘導する。そして!
「ズシャアァァァ!」撃龍槍が黒龍の翼に当たる!翼は貫通はしないものの、
傷だらけにした。「よし!いけるぞ!」だが黒龍は怒り狂っている。
この後に起こる危機にジャック達は知る由もない........
 
黒龍は怒りを暴走させる。ブレスを吐きまくったり、突進をしてきたり
とにかく今は逃げる事しかできない。とその時、疲労により疲れきった
足がもつれ倒れてしまった!「くっ...!こんな時にっ!」立ち上がり走り出そう
とするが、足が動かない。ちくしょう!!ここまで来て死んでたまるかよぉ!
こいつを狩るまで耐えろ、足!動けよぉぉ!必死に念じても、願いは届かず
ゆっくりと黒龍が近寄ってくる。何とか立てたが、走れる力は無く当然、
大剣で攻撃を防ぐ事も出来ない。その時俺は悟った。間違いなく死ぬ。
この絶対絶命の中、生き延びれるのは百分の一の確率だろう。俺は両手を広げ、
「へっ....俺の負けだ...殺すならさっさと殺しやがれ....」と言う。
「ジャック!何してんだ!早く来い!兄貴!」兄貴....やっぱりジャン
は母さんが言っていた、俺の弟だったのか。でもそんな事もうどう
でもよくなる。死ぬのだから.....黒龍は望み通り殺してやると
でも言ってるかのように、俺に狙いを定め、ブレスを放とうとしている。
その視界の片隅でジャンが泣いている。そして俺はゆっくりと目を閉じた.......
 
そして俺は殺されるんだ。....ヘレン達は今ごろどうしているんだろう。
不思議とヘレン達の顔が想い浮かんでくる。何だか悲しくなってきた。
とその時だった。何かが俺のすぐ横を通った。と思ったとき「ブシァァァァァ!」
と血が吹き出す音が聞こえる。とっさに目を開けると、眼を潰され
悶え苦しむ黒龍の姿が。後ろを向くとそこには二人のハンターが立っていた。
一人は肩まで掛かった黒い髪を持ち、大きな蒼い瞳を持ったハンター。
もう一人は背中まである赤い髪に紅いつぶらな瞳を持つハンター。
見ればわかる。ヘレンとリースだ!リースが近寄ってきて、
「師匠大丈夫ですか!?これ飲んでください!」受け取ったものは、
強走薬グレートだ。俺はそれを飲み、ひとまず拠点へ向かう。ヘレンも近づいて来て、
「大丈夫ジャック?私達に内緒で勝手にいくなんて水臭いじゃない。」
などと言うと再び黒龍に向かっていく。早く拠点で回復しなければ。
只其れだけしか頭に無かった。
 
拠点に付いた俺はベッドに倒れ込む。極度の緊張感から解放
されたからだろう。深呼吸した後こんがり肉を食べる。しばらく
食事をしてなかったので、あっという間に無くなってしまった。
そして俺は黒龍にまた立ち向かっていった。そこにはヘレン達と
ジャンが黒龍と戦っていた。怪我が無くて良かった。おっと、
ほっとしている暇は無い。俺も駆けつけ加勢する。大剣
【封龍剣・滅一門】で腹を斬り裂く。血がどっと溢れる。
そこにヘレンが放った一筋の矢が突き刺さる。傷口が
広がっていく。更にそこにリースとジャンが攻撃を仕掛ける。
リースの突進が炸裂したそこにジャンが畳み掛ける。
「うぅおぉぉぉぉぉぉっ!!!」雄叫びしたジャンは鬼神化をし、
双剣の必殺技【乱舞】を喰らわす!ジャンが舞う如く、
目に見えない程素早く黒龍を斬りつける。黒龍は悲鳴をあげる。
その時だった!!リースに黒龍が振り回していた尻尾が直撃する。
それに気づいた黒龍はリースに向き、黒龍の爪がリースの身を
守っていたリオハートシリーズを容易に斬り裂く。「きゃああぁ!!?」
辺りにリースの悲鳴が響き渡る。「リース!!!」そう言い
近寄ろうとした時、黒龍が天高く羽ばたく....
 
「ちっ、ちくしょぉぉぉ!」黒龍を逃がしてしまった。だが、今は
其れどころじゃない。リースが大怪我を負ったのだ。背中を斬り裂かれ
必死に痛みに耐えている。「大丈夫か!?リース!」「すいません師匠....
私のせいで...黒龍を...逃がして...しまって...」見ると傷口は深い。
早く治療しなければ命が危ない一刻を争う事態だ。「頑張れ!
今村まで運んでやる!」そしてリースを背負いヘレン達と村に
帰った。一命は取り留めた。だが...当分動くことはできない。
ハンターを続けられるかも分からない状況だ。「俺に力が
無いばっかりに.....くっそぉ!」俺は側にあった樽を蹴りとばす。
そして俺は決意する.....その目には覚悟というものがあった。
強くなって.....この村に戻ってくる必ず。それまで
待っていてくれヘレン。リース。ジャン........