一部 五章 中編
 五章 力を求めて 中編
 
翌日、俺は酒場で黄金芋酒を飲みながら幻獣チーズを口に運んでいた。
「うん。旨い!さすが最高級の黄金芋酒と幻獣チーズだ。よくあうぜ。」
等といって食べていると、横に珍しい防具をつけたハンターが座った。
防具はおそらくデスギアシリーズだろう。武器はダークトーナメントで、
誰が見てもこいつを死神としか思わない格好だ。とそいつが
「おや?あなた様はジャック殿では?噂は聞いております。あの伝説の黒龍からポッケ村を守ったと。さすがあの伝説の大剣使いの息子だ。」
などと勝手に自分で話ている。まぁ人から誉められるのは嫌いでは無いが。
「俺って結構有名だったんだな。ところでアンタすげえ格好してるな。」
「ククク。このデスギアシリーズは私の体の一部といっても過言ではありませんからね。私はこのデスギアシリーズを付けていると心が落ち着くんですよ。」
「へぇ~。ところで名前は?」「フラック=デルニアですよ。」
その後色々と楽しく会話した....
 
後、フィアーズに入りたいというので、快く承諾したものの、俺は今修行
の旅に出ていてフィアーズの皆は他の所にいると説明した。するとフラックは
まあ私と後2人の女性ハンターまでもが入りたいと言ってきたので、「来るものは
拒まないさ」といい承諾した。二人はマリア=ローズ、リディア=アミーニと名乗った。
しかし何でこんなにも名が売れているのか不思議ではなかった。やはり黒龍の一件を
ギルドが発表したらしい。まあ何はともあれ紹介するためへレン達の所に戻ることにした・・・
 
だがあること思い出す。
「あ.....そういや勝手に村を出たっきり俺もヘレン達の居場所が分からなかったんだ....」
そう、一度村にこっそり覗きにいったときヘレン達はどこか遠くの街に
行ってしまったことを知ったのだ。はぁ~行く先だけでも紙に書いて渡せば
良かったな~と過ぎた事を後悔する。でもこれでいいんだ。俺は
ヘレン達と狩りに行かない方が良い。俺は狩りでヘレン達の足を引っ張る
事だって少なくはない。それはヘレン達も一緒だが、俺には彼奴等を、
村を守りきれる自信と力がない。だからこうして一人で村を出て、
腕を磨いているのだ。とそんな時にマリアとリディアが
二通の手紙を見て慌てふためいている。
「フラック!ごめん!ちょっと実家に戻るね。親が倒れたらしいのよ!」
「そうか。なら早く実家に帰るといい。」
「でも明日はババコンガの狩猟クエストが!フラックだけじゃ無理でしょ!」
「.....ここにいるじゃないか。あの伝説の黒龍を撃退したハンターがな。」
それを聞いた俺はきょとんとした.....
 
.....いま俺は危険な立場にいる。前方には桃色の毛並みをし、頭には
雄々しい立派なトサカをした桃毛獣ババコンガが、後方には
厚い毛皮に覆われ、長く太い牙を持つブルファンゴの長、大猪ドスファンゴが。
左右にはコンガの群。囲まれていて逃げ出せられない状況だ。
フラックはというと......ベースキャンプで気絶して寝ている。背後から
ブルファンゴの突進をまともに喰らい、その勢いで壁に激突し、コンガの突進も
受けて、気絶したというわけだ。不運な奴だ。それで一人で狩猟に行ったら
こうなった訳だ。俺も不運だな.....さてどうするか。手持ちには閃光玉
が一つ。よし、投げてみるかと構えた時、後ろで大猪の悲鳴が!
「な、何だ!?」と後ろを向くとそこには死神の格好をしたフラックが。
.....だが様子がおかしい。頭用装備も見たことが無い、骸骨の頭に変わっている。
と言っている間に大猪は絶命していた。そしてコンガの群も一瞬で
全て絶命した。かなりの剣技だ。俺と同じ、又は同じ以上の腕だ。
「どけ.......俺の獲物だ....邪魔はするな.........」「フラック?」
フラックの様子がおかしい。妙に殺気が漂っていた...
 
「どけといってるだろうぅ!」フラックが俺を突き飛ばした。
フラックが俺に剣を向ける。
「やめろ!フラック!」
その時空から真っ赤な身体をして口が裂けている怪物が現れた
そうフルフル亜種だ。フラックの血の匂いを嗅ぎ付けて来たんだろう
「ッチ」
そうゆうとフラックはフルフルに剣を向けた
(危なかった。一体どうしたんだ?)
また後ろから声がした。
黒い鎧殻に身を包んだグラビモスだ。
「やばいぞ!フラック!」
「・・・・」
 
「おい、お前は逃げろ。こいつらは俺が片づける。」
「何言ってやがる!おれもっ...うわぁ!?」
俺も戦ってやると言いかけた時、フラックが緑色の玉を俺に投げつけてきた。
それはモドリ玉というベースキャンプまで一瞬で戻るという不思議な玉だった。
現在ギルドもこの玉の仕組みを研究中である。緑の煙幕が俺の足元から
もくもくとでる。
「フ、フラッ...ぐぁっ!?な.....」
突然フラックが俺の腹を殴ってきた。フラックの拳が俺の溝に入り、
為す統べなく俺は気を失った.............
どのくらいたっただろう。一、二時間気を失っただろうか。辺りはいつもより
静まり返っていた。
「うう。ここはベースキャンプか......フラックの奴一体どうしちまったんだ?いきなり性格変わるし.......」
と言ったとき、昔聞いたある話を思い出した。
「.......確か、親父だったか。この世には色々な防具が存在するが中には伝説のハンターや凄腕のハンターの頭蓋骨で、作られた呪われた防具があるって言っていたな。まさかフラックが付けていたあの頭用防具は、親父の話していた呪われた防具なのかもしれないな.........」
 
何はともあれ今はフラックがどうなっているかが心配だ。あの三頭に
囲まれて、生きている確率は非常に低い。一人なら尚さらだ。
俺はすぐにフラック達がいた場所に向かった。そこは炎の焼けた臭いがしていた。
そして.....フラックは黒鎧竜とにらみ合った状態でいた。防具はすでにボロ雑巾
のようになっていた。ババコンガは全身から血をだらだらと流して絶命し、
フルフル亜種は口から尻尾まで裂けて絶命している。
「フラック!!大丈夫か!」
しかし返事は無い。俺はすぐにフラックに駆け寄った。
「加勢するぞ!」「来るなと言っただろう.....まぁ今はそんなこと言ってられないが.......」
黒鎧竜がこちらに顔を向けた後、顔を上に向ける。
「横に飛べえっ!」
直後、すぐ横に生命を死滅させる熱線が通る。少し防具の焦げる臭いがした。
俺は最初で最後の閃光玉を投げつける。閃光がグラビモス亜種の目を焼く!
俺は懐に潜り込むと、マカライト鉱石をふんだんに使った太刀
【鬼斬破】で腹部を斬り裂く!しかし刃は通らない。さすが鎧と言われる、
グラビモスだ。堅さが半端じゃない。
「くっ堅ぇ!刃が通らねえ!...あの手があった!」俺は拠点に直行した。
 
俺が取りに言ったものは雨天の時のみ使用可能の道具、【爆雷針】だ。
武器が駄目なら道具しか無いだろう。俺は携帯シビレ罠を仕掛けると、
高らかに角笛を吹き鳴らす。
「フラック!こっちだ!」
フラックは軽く頷き、こっちに向かってくる。黒鎧竜は計算通り、
シビレ罠めがけて突進してくる。そしてまんまと罠に掛かる。
「爆雷針を仕掛けるぞ!離れろ!」
黒鎧竜の腹の下に持ってた爆雷針をすべて仕掛ける。五つの雷が
黒鎧竜の堅殻にヒビを入れる!
「うおぉぉぉぉ!!気刃斬りぃぃぃ!」
鬼斬破が堅い堅殻を砕く!剥き出しになった肉を斬り裂く。
血が溢れ、黒鎧竜は呻く。そこにフラックの気刃斬りも炸裂する。
黒鎧竜は後ろを向き、逃げだそうとする。だが俺達は止めの気刃斬りを喰らわせ
黒鎧竜は倒れ込み、絶命した.........
 
俺が素材を剥ぎ取っている時ふと振り向くとフラックの
頭用装備がデスギアに戻っている。どういう事だ
「....ここはどこですか?私はドスファンゴに後ろから突進されて
気絶してたはずですが。」
「まさか、ここにいる3頭すべて貴方がやったんですか!?流石黒龍
を撃退した男,恐るべし・・・」
殆どお前が倒しただろ。と突っ込みを入れたい所だが、話す元気もない。
俺が黙々と素材を剥ぎ取っている中
フラックはヒヒヒ・・と薄気味悪い笑みを浮かべながら何かブツブツ
言っている。まぁ気にする事じゃないだろう。
素材を全て剥ぎ取り、俺達は集会所に戻った。
集会所の案内嬢が慌しくこっちに向かってくる。
何があったんだろうか・・
 
向かってきたのはマーラン=サラという案内嬢だった。彼女は
昔ポッケ村の受付嬢だったが、今はジャンボ村で案内嬢をしている。
「大変よジャック!ここに老山龍が向かってきてるの!」
「老山龍.....任せておけ。フラックも防衛戦行くだろ?」
「もちろんです!任せておいて下さい。」
「今回の老山龍はかなり手ごわい相手になるはずよ。亜種だからね。」
「亜種は確か下位レベルが無いんだったな。上位ならかなり良い素材が手に入るチャンスだな。俄然やる気がでるな。」
「だから準備が出来しだい老山龍の撃退に向かって。頼むわよ。」
「ああ。フラック、三十分後にまたここで集合だ。」
「わかりました。頑張りましょう。」
そして各部屋に戻り、準備をする。武器は........今回は大剣で行くか。
出番だぜ.....封龍剣。俺は武器を担ぎ、フラックと共に老山龍撃退に向かった........