一部 最終章
 最終章 起源にして、頂点
 
「うおぉぉぉぉぉぉ!」
俺はありったけの力を込め、剣を振り下ろした。今持っている力を使って。
「ギャウゥゥゥゥン!」
覇竜が悲鳴に近い声をあげる。フラックは右足、リースは左足に
気刃斬りを喰らわせる。これは大きい!覇竜がよろめく程の攻撃を与えた。
が、覇竜が突然身体を赤みを、帯びて、堅殻がより一層堅くなったように見える。
そして、
「グォォォォォォォォォォォン!!」「ぐわぁっ!?」
奴がボインドボイスをしたとたん、身体に強い衝撃がはしった。
フラックもリースも俺と同様、奴のバインドボイスを喰らい、吹っ飛んでいる。
「くっ!バインドボイスでこれか!もはや反則技だぜ。」
と呟き、回復薬グレートを飲み干す。と、途端背中に寒気を感じる。
まさか!?後ろを向くと俺に向かって顔を上にあげていた。
しかもこんな時に死への恐怖が俺の身体を硬直させていた.....
 
俺もここまでか!?と、思ったときある一人のハンターが俺の目の
前に現れる。それはフラックだった。
「なっ、なにしてんだ!早く逃げろ!」
「なにをいってるんです。貴方が死んだら、あの方達が悲しむでしょう。それに私は貴方に賭けてるんです。貴方なら、あの方達とならきっと覇竜を倒せる筈です。後は頼みましたよ....ジャックさん.......」
と言うと、フラックは吹っ飛んだ。俺の目の前で、フラックは、
吹っ飛んだのだ。溶岩の中に入らないだけ良かった。入ってしまったら、
骨も何も残らなかっただろう。デスギアSシリーズは無惨にも
元の原型を失っている。
「覇竜ーーーー!!」
俺は覇竜に一直線で走る。ただ怒りを覇竜にぶつけるために.......
 
走り寄った俺はまず閃光玉を投げつける。たちまち覇竜は目を灼かれ
苦しむ。剣を抜刀し、覇竜の勇ましい、憎い大牙に怒りを剣に込めて、叩きつける。
初めは弾かれたものの、連続で斬るうちに大牙は音を立て、折れた。
覇竜は未だに身体に赤みを帯びている。恐らくは奴も怒っているのだろう。
たかが人間に、非力で軟弱者の分際で。とでも思っているのかのように。
「グオォォォォォォォォッ!!!」
覇竜が吠える。俺たちに怒りをぶつけるかの様に。だがお前だけじゃない。
俺も、お前がムカつくて、憎くいんだ。
「おらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
怒りを込めた渾身の一撃はもう一つの大牙をへし折る。もはや俺は、
怒り、復讐、恨み、憎しみ、しか頭になかった.....
 
「ジャック!怒りに身を任せちゃ駄目よ!」
ヘレンは叫んだ。....駄目だ、聞こえてない。あんな無茶な戦い方
じゃ、絶対攻撃を喰らう。ジャックを正気に戻らせる為にヘレンは走って
向かう。そしてジャックの元に着いたとき、覇竜が尻尾をこちらに
たたきつけようとしているではないか。ジャックは気づいてない。
このままでは、ジャックが危ない。
「ジャックの馬鹿!」
言い、ジャックを突き飛ばす。ジャックは突き飛ばされ、尻餅をつく。
正気に戻ったジャックは、最悪な光景を見る。尻尾を喰らったヘレンは
胴鎧の背中の部分がひび割れており、半ば背中が見え、血を流していた。
(おれは何をしてたんだ!くそぉ!馬鹿やろう!)
と心の中で叫ぶ。無事を願ってヘレンの所に走り駆けた......
 
「ヘレン!!」
致命傷に至らなくて良かった。だがもう戦える状態ではない。
「ヘレン....ごめん。やっぱ俺にはお前を守ってやれなかった....」
立ち上がり必死に閃光玉を投げ、戦っているリースに向かった走り寄る。
「リース!お前は無事か!?」
「だ、大丈夫で...す。」
よく見れば足が変な方向に曲がっている。よくこれで戦えたものだ。
「リース.......お前はヘレンとフラックを連れて逃げろ.......」
「何を言うんですか!!最後まで私は戦います!」
「逃げろっ!!!!早く行け!!」
怒鳴った俺に戸惑いを隠せない目でこちらを見る。
「お前達と過ごした日々は幸せだった.......お前達は、逃げたらハンターを辞めるんだ。もう決して狩りに出るな。お前達だけには、無事でいてほしいんだ。駄目な師匠で悪かったな.....これが最後の言葉だ...逃げろ!」
リースは鼻水と涙と汗で酷い顔になって、走った。ヘレンとフラック
を担いで、緑の煙幕によってリースの姿は消えた。
「.....こい。覇竜....決着を付けてやる.....」
覇竜に向かって走り出す。村の人たちの、ヘレン達の笑顔を思い浮かべて...
 
こいつを倒し、村を、ヘレン達を守る...それが俺の最後の使命だ。
もう命など捨ててもいいぐらいだ。<龍刀・朧火>を足にたたきつける。
リースが傷を負わせた所を斬ったおかげで、覇竜は横転する。
「グガァァァァォォォォ」
覇竜は必死に立とうとしている。そこに俺は気刃斬りを覇竜に喰らわせる!
斬る!斬る!!斬る!!!足は上鱗が剥がれ肉が丸出しだ。
覇竜はここでまた怒りを爆発させる。覇竜を好きに動かせては駄目だ。
閃光玉で行動を封じる。忽ち覇竜は悶え苦しむ。今は俺のペースに乗っていて、
上手く戦える。俺は後ろに回り、覇竜の尻尾に気刃斬りを喰らわせる。
たちまち尻尾は血を流し、骨が少し見えた状態だ。そこに渾身の一撃を
尻尾にぶつける。尻尾は肉と骨が引きちぎれ、吹っ飛び覇竜は
前のめりになり、倒れた。
「覇竜.....そろそろ決着をつけようじゃないか。俺はお前を倒す.....必ず....」
覇竜はもはや怒りを暴走させて、理性を失っている状態と見た。
「グガァォォォォォォォォォォォ!!」
覇竜のバインドボイスが辺りに轟く。俺にはそれが何処か遠くまで
響き渡っている気がした....遙か遠くまで...
 
覇竜は足を引きずっている。だが逃げようとは決してしようとはしない。
奴にもプライドというものがあるのだろうか。それともすでに死を覚悟
しているのだろうか。いずれれにしても、俺に言える義理ではないが。
クーラードリンクも残りわずか、気力も体力も残ってない。攻撃は
次で最後になるだろう。おそらくは覇竜もだ。これで片づける。
そう決めた時、両者、睨みあった状態から動き出す!俺の方が一歩出が早く、
覇竜に接近する。覇竜はというと顔を上にあげ、最後の一撃を
俺に喰らわそうとしている。この勝負、俺の攻撃が早いか、覇竜の
攻撃が早いかで決まる。剣の柄を握り締め、抜刀する。それは覇竜が
ソニックブラストを繰り出すタイミングとほぼ一緒だった.....
 
「ピュッ!ゴオォォォォォォ!!」「ズッバアァァァァァ!!!」
ふたつの音は同時におきた。俺は吹っ飛び、覇竜は撃沈した。
......沈黙が続く.......立った方がこの勝負の勝ちだ。静寂に包まれた中、
雄叫びが辺りに轟く。
「グオォォォォォォォ!!グアオォォォン!」
勝ち誇った雄叫びが静寂だった決戦場に響きわたった.........
 
だがそれは何時までも続きはしなかった。覇竜は雄叫びをあげた後、
また撃沈した。完全に動かなくなり、絶命した。とその時、
一人のハンターが立ち上がる。そのハンターは素材を全てはぎ取り、
村に帰った...愛する人達と信頼してくれる人達のもとへ、
覇竜をゆういつ討伐したハンター、ジャック・アーバァンは
誇らしげに帰った行ったのだ....    

最終章 起源にして、頂点    終