AS 31~40

 三十一話

 

 

「フリード、まずいわ・・・。」
「何が?!」
「見て、あいつのクチバシ。さっきの奴とは違って・・・欠けているわ。」
 ま、まさか!!
「このあたりの足跡の数から、最低あと三頭はいるようね。」

 

 

 

 

 

 

 三十二話

 

 

 

「どうやら、逃がしてはくれないようね。フリード!!」
 言いたいことは・・・。大体分かっていた。
「ああ、初討伐だ!」
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奴から逃げていた二人の足は、奴の方へと向き直っていた。

 

 

 

 

 

 

 三十三話

 

 

 

 どうやらここにいるのは、今のところ奴一匹のようだ。
「りゃあぁぁあ!!」 
 翼に二振り入れた。いきなり反撃に出たのが意表をついたのだろう。しかし、
空中で無防備な俺に奴の尻尾が襲う。・・・く、くそぉっ!
 シュン・・・・ドゴォォンッ!!!
「うぐぁ!!!」「キュオォォーーーーーーッ!!!!」
・・・・・徹甲榴弾!? 
 爆風で尻尾の起動がズレ、奴の尻尾の直撃を免れた。
「後衛は任せなさい!奴は大きな音が苦手。今よ!」
 奴は耳がいい・・・。そうか、ミリーはそれも狙って・・・。
「ハアァァーーーア!!!」
「いくわよーーー!」

 

 

 

 

 

 

 三十四話

 

 

 

 ザシュ、ザシュシュシュ、ザシュ・・・ブシュウゥゥーーー!
 血しぶきが舞い散る。しかし、なんて丈夫なんだ。数回斬っただけで息絶える小型獣とは
大違いだ。だが、コレで立ってられるかぁぁあっ!!
「危ない!!!よく見て、そんな欲張ったら・・・・・」
「な、何!?・・・があぁぁっ!!」
 も、もう直ったのか!?
 ついばみをクリーンヒットして、バトル装備の右肩が少し砕け散った。数メートル吹っ飛ぶ。
な、なんて力だ・・・。ッ!!またか!!
 奴は大きく跳んでついばんできた。今度はミリーの徹甲榴弾の爆音にもまったく動じていない。
ただ、目の前の獲物を獲るために目を血走らせて。

 

 

 

 

 

 

 三十五話

 

 

 

 奴の方向に回避して、懐にもぐりこむと同時にクチバシをかわす。薄っすら汗ばんでいる手で、ツインダガーを握りなおす。
「クワ、キョワーーーッ!!」
 腹に、たて続けに連続切りを叩き込む。甲殻のやや薄い場所なのか、斬る度に
大量の血が噴出し、バトル装備に降りかかる。
「フリード、離れて!!」
 そういうと、次の瞬間爆音とともに奴の体を爆炎が包む。近くにいた、フリー
ドは、耳をつんざく狂音に一瞬ふらつく。

 

 

 

 

 

 

 三十六話

 

 

 

「や、やったか?」
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 あんな強烈な攻撃で、少なくとも今までのようには・・・待てよ、着弾した後、
   少し遅れて、離れたところから鳴声が・・・・まさか!
 フリードは、空を見上げる。そこには、陽を覆うような大きな影が空を飛んでいた。
「やっぱり! ミリー、上だっ!!」
「えっ!?」
 滑空しながら、ミリーの方に飛んできている。足の鉤爪が、光って見えた。
「何やってんだ! 早く逃げろ!」
 ミリーは震えている。意表を突かれて驚きと恐怖のあまり、固まってしまっていた。
「ミリーーーーーッ!!!」        
        ・・・ビシィ・・・・・ドスッ・・・

 

 

 

 

 

 

 三十七話

 

 

 

「フ・・・フリ・・ド・・・。」
 フリードは、奴の攻撃をまともに受けてしまった・・・・・。吹っ飛んだ衝撃で、右足をやられた。右足が動かない。
 横を見ると、傷だらけで大量に血を流した奴がいた。
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ぬぅ・・・こ、こんな時にっ!
 いや、感じたことも無い「恐怖」に怯えているのか。フリードの体は、まるで自分の体ではないように重かった。
 しかし、無情にも攻撃を繰り出してくる。奴のついばみを横に転がって避ける。イャンクックのクチバシは、豪快に地面にめり込む。
 しかし、たかだか足を使えない者のその場限りの悪あがき。奴の素早い二発目に、繰り出して
きたついばみを避けることは、もはや不可能だった。

 

 

 

 

 

 

 三十八話

 

 

 

 

 

「・・・・・ここまでか・・・。」
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 これで、終わるんだな。なにもかも。結局ミリーには、何もしてやれなかったな・・・。
    情けねぇ奴だなぁ・・・俺は。
           ・・・・・。
「キョワーーー!!!クワァァ・・・。」
           ・・・・・なに!?
「よくも・・・。よくもよくもよくもッ!! よくもフリードをッ!」
 ショットボウガン・蒼は、奴のあらゆる甲殻や皮膚をえぐっていた。ミリーは泣いていた。

 

 

 

 

 

 三十九話

 

 

 

 奴は、嵐のように群れ飛ぶ弾幕をくらい、悲鳴を上げながら二、三歩と後じさる。
 だが、急所を思うさま斬られ、終始弾丸を浴びせられ続けていて、血だらけになってそれでも奴は立っている。
          ・・・・カチッ・・カチッ・・・。
「そ、そんな・・・。」
ミリーも、怒りに任せて撃ち続けていたが、元の採集目的だけあって弾はもう底をついてしまった。
「徹甲榴弾一発・・・・。コレだけじゃあ・・倒せない・・・。」
 無念と絶望に表情を浮かべ、ミリーは膝をついてしまった。戦えなくなった二人に、甲殻は所々剥がれ落ち、鶏冠は切り落とされ、翼幕をズタズタにされ、体中ボロボロになった奴がゆっくりと近寄ってくる。
「ミ・・・リ・・。俺をおいて・・逃げろぉ。」
 奴は、もう歩けない俺を後にして、ミリーをにらみつける。血化粧をした奴は、今の俺にはどんなものより恐ろしく感じた。鋭いクチバシが、陽にあたって薄く輝く。
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あと少し、あと少しでいいんだ。頼む俺の体ぁ!動いてくれえぇぇッ!!!
「ミリー・・・ミリーーーーッ!!!」
「・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 四十話

 

 

 

「キョワーーー!」 「きゃっ!」
 奴の尻尾が、ミリーを吹っ飛ばす。物理攻撃に、元から得意ではないガンナー装備は、頼りない音を立てて右半分がズタズタに砕け散った。

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やめろぉ・・・これ以上ミリーに・・・・・。

「クワッ!キュワァァーーー!!」 「く・・・うう・・。」
 爪で追い討ちを、とっさにボウガンで防ぐ。マガジンは醜く曲がり、ロングバレルは取れかかり、銃身にはひびが入った。
 ぐったりと動かなくなったミリーに、奴はクチバシを大きく振りかぶった。

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手をッ!!出すなあァァーーーッ!!!