虚空 第七章
 第七章 第二の伝説と伝説を語り継ぎし吟遊詩人
 
説明し終わると同時くらいに「そんな龍がいたとは、まだまだ
研究不足じゃの」と観測所の所長はうなだれる。そんな中俺たちは
ギルガイクが暴れ回っているという情報を聞きつけ討伐するために
旅立った。聞いた話によると討伐できるものはいないと言う。
そんなことは関係ないと吐き捨て、樹海【深奥】に向かった。
木々が生い茂り真っ暗な場所だ、松明を使って奥へと進む。
その時ホロは「ぬし様達よ右に飛んでくりゃれ」というので
飛ぶと隣に「ヒュッ」と風を切る音が聞こえる。
見るとギルガイクが姿を現した…
 
その姿は俺が見た奴より遥かに美しくデカイ。黒光りする
鱗はさざ波のように連なり鎧を纏っているかのように堅い
が見た目は羽毛のように柔かそうに風になびいている…
次の瞬間奴の咆哮による竜巻が木々の葉を巻き込みカマイタチ
のように襲い掛かろうとする。アリスが風の加護で打ち消した。
その時にはホロが身体能力の高さで後ろに回りこみ独特の
武器と動きでギルガイクに攻撃するものの傷は付かない。
ひらりと身を翻し追撃を避けて何かを呟いたかと思うとホロの
身体は毛に覆われその毛は鱗のようにその皮膚を護る。
ホロが武器以外持たないのはこのためであると話してくれた、
この状態は興奮しているらしく俗にトランスと呼ばれるもの
らしいので俺たちはトランスと呼んでいる。
このトランス状態の時は異様に身体能力が上がり肉体強度も
増すというらしい…だがそんなホロには負けておらずこちらにも
加護がある。加護を駆使してホロを援護しつつ攻撃する…
そんな中ひょいと疑問がわいて来た。さっきから息がきれてない
奴は余裕なのではないかもしかして実力を隠しているのではないか
その疑問は的中した。ギルガイクは一声鳴いたかと思うと鱗の
量が一気に三倍以上に膨れ上がったのを確認したときにはもう
遅かった…
 
途端にギルガイクの姿が見えなくなった。だが変わりに黒き風
が吹き荒れる。目を凝らして見れば奴の姿が見え、その隣には
茶色の風のように速く動き斬り合うホロの姿が見える。さらに
その隣には風の加護で加速し、白銀の風の如く援護をするアリス
の姿があった。俺らはそのスピードにはついていくことは出来ず、
援護することさえままならない。大地の加護で
地形をクレータの様にへこませ一点に動きが集中するよう
にし重力の加護で動きを鈍くさせる。
そうすることで俺達も戦えるようになった。
一斉に全員の最大威力の攻撃をぶち当てる…
それでも奴に多大な傷は与えられたものの狩る事は出来ない。
どうすれば良いかと考えている内に背中に悪寒を感じた…
 
ギルガイクの怒りは」頂点に達したらしく激しく動き回り
暴れたもののいきなり止まり身体の色が白へと変わる。
白銀の鱗に覆われたギルガイクは淡い光を放ったかの如く
輝き見とれてしまったほどだ。その時雷電の如き速さで動いて
こちらへと向かってくる。重力の加護はかかっていたものの
その速さは一向に収まる気配は無い。ホロのトランス状態も
解けてしまっていたので頑張ってはいるものの追いつけない
アリスも風の加護の限界がやってきたらしくその場に座り込む。
ホロも疲れきり座り込み休む。俺らは消耗戦は得意ではなかった
からだった。そんな時休んでいたホロにギルガイクが襲い掛かる
「ズシャァーーー」と切り裂かれる音が響く。
だがホロには傷ひとつついてはいない何故なら俺が盾と
なったからだ。「ぬしよどうしてわっちの事を助けた」
というホロに「これ以上仲間を失わないためさ…」
「この…たわけが…」と小声で呟いたのが聞こえたかと
思うと「ビシャァ」と地面に水が放たれる音が響く。
俺が血を吐いたからだった。「ぬしよ無理をするな、
ここはわっちらに任せてさがりんす。」といいつつ
俺の口から垂れる血を啜る。途端にアリスたちが
俺を抱えモドリ玉でテントへと戻ろうとする…
 
戻りかけながらホロが苦しむ姿と変化している姿が見えた。
ホロは牙狼種本来の力で狩ろうとしているのだ。
テントに着くとミリアが水の加護で手当てをし、バートレッド
が炎の加護で火傷させ止血する。包帯をぐるぐるに巻き、
何とか動けるようになる。「皆は村に戻り医者を呼んできてくれ。
俺はホロを援護しに行く。」「そんな身体じゃ無理よ。」
「無理でも何でも行かなきゃ行けないんだ!
もうこりごりなんだよ仲間を失うのは…」
「わかった…無理しないでね…」
そういうアリスの目には涙が浮かんでいた…
俺が着くと狼の姿で戦っているホロがいる
ホロは血まみれだが奴はまだ息がある。
「ホロっ、助けに来たよ。自分じゃたとえ
本来の力を出したとしても敵わないのは分かっていた
くせに…無理すんなよ」「すまぬの…」俺は腐食の加護を
纏わせた創造と破壊の加護で作った剣を持ち大地の加護で
ギルガイクに石の槍を飛ばす。無論当たるとは思ってないが
俺とホロには策があった。俺はホロにまたがる。ホロは全力で
駆け、ギルガイクに向かう。近づいたときに力一杯に剣を
振り下ろす。ギルガイクにヒットすると脳へと刃が届き
息絶えた。テントに戻ると医者が来ており治療を受ける。
こうしてまた伝説をうち立てる事が出来た…
このあとの嬉しきイベントが知る由も無い…
   第七章 第二の伝説と伝説を語り継ぎし吟遊詩人
          完