虚空 第八章(前編)
 第八章 ハッピーイベント勃発(前編)
 
受けている最中にもホロが見守る。そこにジェラシーをメラメラと
燃やして割り込むアリス。そこでホロも負けじと割り込む。二人の
間には火花が散っている。おそらくケンカが起こればアリスはひと
たまりも無いだろう、「どきなさいよ、私がロベルト様の看病を
するの、つまりあんたは用無し」「そんなことありんせん。主様は
わっちの看病を望んでいんす」「主様~?まだ夫婦にもなってない
のに言える事かしら」とやはり口喧嘩が始まる。その時医者が
「怪我人の前でそんなみっともない事しないで下さい。傷にさわり
ますゆえ…」と言い放つ。途端にアリスとホロは口喧嘩をしつつ
出て行った…
 
その日はゆっくりと休むことが出来傷も
次ぐ日の朝には完治していた。
隣には何故かホロが「すぅすぅ」と寝息を立てて眠っており
ホロが夜の間手当てを続けたのだと医者から聞く。
ホロに毛布をそっとかけ今まで俺が寝ていたところに
寝かせる。着替えを済ませ部屋を出ようとして振り返ると
ホロの尻尾は「わさわさ」と左右に揺れていた。
それは麦の穂が風に揺られているようだった。
部屋を出てすぐに部屋から「ぬし様~置いて行かないで
くりゃれ」と声が聞こえ部屋からホロがでてきた。
その姿は朝日に映え妙に美しかった…
 
その時かけって来たせいかこけてしまう。
受け止めようとしたが、つまずきこける。
両者がもつれ合い倒れこむ。俺は地面に激突
し痛みが全身に走る。だが目を開くとそこには
ホロの顔が間近に見える。唇にとても柔らかい
質量を感じる。目線を落として見ればホロの唇
が俺の唇に触れている。さらに下には豊満な胸が
触れている。とっさに立ち上がり慌てる…
 
「わわわっ」慌てふためく俺に対し妙に
普通の態度でいるホロ。「ぬし様の胸板は
厚くてどこか優しい感じで女性に好かれる
物でござりんす」という。放心状態の俺が
落ち着きを取り戻すのは暫くしてからだった。
その一部始終を影で見ている人影があった、
言わすもがなアリスである。「あの雌狐め、
わざと転びましたわね、それにあんな甘い
言葉まで」ジェラシーの炎が最高潮に達する。
そのアリスにホロは気付いており不敵な笑み
を向ける。当然俺はこの恋人争いとその争いから
生まれるラッキーイベントを知りはしない…
 
集会所へと着いた時、「パンッ」とクラッカーの音が
鳴り響いた。そこには俺達レクイエムの仲間、バートレッド
アリス、シルフィーナ、ロードス、オレガノがそれぞれ笑顔
をし、「ロベルト、一狩り行こうぜ!!!」という。
「行こうぜ、何にするんだ?」「キリンだよ、キリン」
「キリンか、まあ勝てない相手ではないな」「早速出発だ」
と意気揚揚に決戦場へと向かうための龍車に乗る。
龍車とは飼いならしたモンスターを使った現代でいう車だ
最低ランクはアイルー、つぎにアプトノス、次にリオレウス
最高ランクは古龍種という感じだ。もちろんG級ハンターの
俺達は最高ランクの古龍種で値も張ったが良い感じのクシャル
ダオラだ、先に女性陣が乗り込む、アリス、シルフィーナ
に続きホロが乗り込もうとしたとき「バキッ!」と木の折れる
音がした…
 
「グラリ」とホロはよろけると同時に俺は駆け出していた。
「危ない」と誰もが思った、「ドスン」と音がするはずが
「ポスン」と柔らかいものに包まれる音が響く。
俺が受け止めたのだ、そのままお姫様抱っこの体勢に
なり、龍車へと乗り込む。ガタゴトと揺れる龍車のなかで
ホロは心で「心がざわついている。なんだろうこの気持ちは
わっちは一人で生きてきた。これからも一人で生きていくはず
だけどロベルトに触れると電気が流れた見たいになり身体が火照る
し一人じゃなくてこの人と一緒に居たいと思う。こんなんじゃいけない
気持ちを落ち着けないと、このままじゃ私どうにかなっちゃいそう」
そんなことを考えていた。そんな中龍車が浮かぶクシャルが飛んだらしい
だがとたんに決戦場に着いた…
 
決戦場は異様に暑い、マグマの滞留と循環火山に近い
所為もあるだろうがそれ以外にハンター達の熱き心が
この決戦場が暑い一番の要因だろう。ここでは日夜狩りが
行なわれその度散っていくハンターやモンスターの命。
そのはかなさをも打ち消すような熱き血潮の沸きあがる
命の削りあい、殺し合いがくりかえされているのだ。
クーラードリンクを一気に飲み干したもののこのハンター
特有の興奮は冷めない。お気に入りの武器を背負い込んだ
俺たちはキリンのいる決戦エリア9に向かった。雷撃が
吹き荒れるこの地は地面が抉られこげている。そんな足場の
悪い中キリンが姿をあらわす。「やっとお出ましか、いっちょ
ド派手に狩りますか」と突っ込むバートレッドに「もう一匹
居るから力は温存しろよ。」と最年長のロードスがいう。
キリンはその身体を震わせこちらへと突進攻撃をするものの
ひらりとよける。がその後の雷撃攻撃がアリスとホロにかする。
「パチン」と何かが弾ける音がしたかと思うと二人のD~Eは
あろうかと言うそのふくよかな豊かな胸があらわになる。
免疫の無い俺は赤くなりホロに予備の防具を投げる。それは決して
弱くないギルガイクの素材を使った防具だ。メインのギルガイク防具
よりかは少し薄いもののそれでも俺の物とさほど変わらない。
アリスにはガンナー用のラオの防具を渡す。すぐにそれに着替える
アリスとホロ。「さあ殺し合いの再開だ」何故かそんな
手間取っていたのにキリンはバートレッドとバトルしていた。
参戦するため駆け寄っているときホロが耳元で「なかなか良い
胸じゃったろう?あと鎧を有難うの、それにこれはペアルック
ではないかや?」とささやく。これは暫くホロの顔を真向きに
見ることは出来そうに無い。そしてキリンへと対峙する…
 
キリンはいななき雷撃をその身体に纏わせ
筋肉を電気信号で刺激、肉質を一段と堅くする。
さらに金属には電気を流し敵を痺れさせる。
いわば機動力を得たフルフルと思ってよいが
その肉質は角龍の角の堅さと同じくらいだ。
何故そんなことが分かるかといえば
バートレッドがすべて試しているからだ。
そこで俺は持ち手にゲリョス素材を巻きつける。
皆は持ち手に絶縁体を使っているため安心だ。
だが鎧等は対処しようが無いと思っていたが、
ふと思いついた。大地の加護で土を上に
コーティングしたのだ。そしてキリンは雷撃の
雨を降らすもののロードスとオレガノによって
軌道をずれさせる。これでキリンの雷撃は意味を
成さない。全員で切りかかり一匹のキリンは息絶えた。
だがその時二頭目が現れたとき恐怖を覚えた…
 
その恐怖の正体はもう一頭のキリンが異常だったからだ。
何処が異常かといえばきりが無いがまずその体格、ラオは
あろうかという巨体、発電量がこれまた半端無い。
落雷も大木の幹ほどもある。さらにその巨体からは
考えられない程のスピードが合わさったまさにキリンには
無かったものが全て揃った感じだ。その半端無い力の前に
身体が弛緩するも俺の身体に何かが覆い被さる物がいた。
それはホロだった。「わっちもこれほどの恐怖は感じたこと
ありんせん。身体から力が抜けおった。暫くこのままで居て
くりゃれ」「駄目だ、このままでは皆死んでしまう。そんな
事にはさせない。ホロは皆を連れて避難してくれ。」「わかった
ぬし様の頼みとあらば…ぬし様よ引き受けたが死ぬで無いぞ。
決して死ぬで無いぞ、村に帰ったらご褒美があるからの必ず
生きて帰って来てくりゃれ」と返事をするホロ次の瞬間
唇に柔らかい物が当たるそして俺の口の中にうねうねとした
物が入ってくる。さらにそのうねうねは俺の舌に絡みつく
何分そうしていたかは分からない。そして唇から柔らかい物は
離れる。「ぬし様、生きて帰ってきたら続きをしましょう」
「分かった、必ず生きて帰るよ」「この…たわけが」
そう言ったかと思うと皆を連れて避難していった。
「さあキリンよ殺し合おうか」という俺の身体には
恐怖は微塵も残っていなかった…
 
キリンはいななく、デカイせいかいななきさえも
攻撃になる。そのいななきによる真空波を紙一重で
避け足へと刃を突き立てる。無論弾き返されたが計算の
内だったそこでゼロ距離の腐食の加護を足にぶち当てる。
途端に腐食がキリンを包み込み問題だった雷のヴェール
を剥がす。その頃ホロたちは村へと帰っていた。
「ここでロベルトの帰りを待ちましょと酒場に向かうアリスたち
だがアリスたちの龍車に何者かが乗り込み飛び去って行った。
またその一方ではキリンの雷の鎧を外し形勢を均衡へと
持っていったロベルトが不敵な笑みをキリンへと向ける。
この挑発に怒り狂ったキリンは角で地面を突付き始めた、
全ては標的を殺すためだけに…だがそれさえもロベルトの
計算内でむしろこれを狙っていたのだ。紙一重で避けつつ
機会を狙う。キリンの角が深く地面に突き刺さったその一瞬
ロベルトは首へと飛び乗った。起き上がったキリンは相手が
居ない事に気付き探すも見当たらず警戒を解く。だがその時
ロベルトの刀が脳天を襲う。血を噴出し倒れるキリン、狩った!
と思ってその場を立ち去ろうとキリンに背を向けたときに背中に
雷撃が襲う。収束された高圧の雷は人一人殺すことは容易だ。
影も形も残らないと思っているキリンが見たものは背中が
焼け焦げながらも目の前に立つロベルトだった。だがこのときの
ロベルトは立っているのが限界で刀を振る力も残されていなかった。
それを察したキリンが猛スピードで角を此方へと向け走ってくる。
だがロベルトには当たらずキリンの攻撃は空を切った。
その後ロベルトが見たものとは…
 
見たものとは狼を思わせる可愛らしいケモノ耳、
さらにフサフサしてこれまた可愛らしい尻尾。
付け加えて風光明媚でモデル体型、胸はふくよか
で尻はプリンと可愛くて、目は緑と赤の色で
向かって右が赤で左が緑という特異的な
目の色さえもいとおしく思えるほどの美人。
それでいて俺を助ける人物…おのずと答えは
導き出された。そう、その人物とは皆を連れて
村に戻ったはずのホロである。「ぬし様よ、
負けると分かっていながらわっちらを逃がした
じゃろう。ぬし様がこんなに怪我をしているのに
黙って逃げるわっちではありんせん。ちょっと
じっとしててくりゃれ」というと小声で意味の
分からない謳を紡ぎ出した。その歌は昔の言葉
らしきもので謳われており意味が少ししか分からない。
が謳い終わったその時、俺の身体は風に包まれ癒されて
いく傷は塞がり、やけどは治り完全な状態へと回復した。
どうやったか分からないが、ホロは各地に眠る精霊と
契約を交わしその力を貸して貰い対象を攻撃したり、
回復したり、自分の身体能力を極限まで上げたり
することが出来るらしい。キリンはいきなりの
出来事に驚いていたがすぐに攻撃を再開した…