賢狼　第一章

　第一章　あの日の思い出と共に

夫婦になったあの日から早１５年、子供達は立派に
成長して今ではいっぱしのハンターとして歩みだした
がまだまだひよっこに過ぎない。俺とホロは指輪を
したあの日からちっとも変わっていなかった。あの
指輪のお陰だ。それからというもの子供達にハンター
としての心構えを教えたりしている。休日は家族皆で
イャンクックの大量狩りで素材と食材、金を稼いでいる。
今日も休日となりクックの大量狩りをするため大闘技場に
足を運んでいた通いなれた道を歩く子供達はどこか楽しそう
だが俺とホロはいつもと違う雰囲気を感じていた…

大闘技場に着き、中に入った時に辺りから異臭が漂ってくる。
匂いの元は無残にも喰い殺されたイャンクックの死骸からだった。
おそらくは古龍の被害にあったものと思ったが一瞬の後
その予測は覆された。眼前にいたのはクックの面影は無く
妙に変化したものらしき奴が立っている。
モンスター図鑑の古い物を出し読んだそこには
奴が書かれていた。
奴の名は神怪鳥【フェニックス】というらしい、
フェニックスは黄金の羽を持ち
金よりも堅いオリハルコンのような素材で出来ている
羽毛をしておりくちばしはダイアモンド足はエメラルド、
内部はフェニックスの宝玉と呼ばれ、今では分からない
素材で形づくられている物が存在する。ブレスは
細かくされたダイアモンドを吐き出し、敵を蜂の巣に
する。その金剛石で出来た爪はたとえダイアモンドの
板であろうと容易く砕き粉砕する。羽を飛ばすこともあり
避け切れなければ死は確実だがどうなることやら。
終始読み終えフェニックスと対峙する。
まだ狩られたことの無い不死鳥の異名を持つこいつは
身体全てが希少素材で出来ているため絶対に狩ると
誓い子供達に援護を頼みホロと一緒に戦闘を開始する。
俺が大地の加護でドームを作り逃げ場を無くす。
ホロは精霊の力を借りた渾身の一撃を喉元に食らわす…

だがホロの一撃は当たっているにもかかわらず
羽の堅さに跳ね返され傷は付かない羽は抜け落ちる
ものの瞬時に生えるため皮膚を切り付けることはまずいって
出来ない。「お母さん避けて！」と叫んだのは娘の
リリーだ。その瞬間ホロは身を翻した。「ビシュ！」という
鋭い音と共に弓矢が発射されるその矢は寸分の狂い無く
フェニックスの抜け落ちた羽の合間に刺さる。ちなみに
麻痺ビン付だ。深く突き刺さった矢はちょっとやそっとじゃ
抜けないさらに矢じりには俺から受け継いだ腐食の加護を
纏わせてあるため効果はかなり高い。リリーの弓の師匠は
他でもないアリスだ。アリスはホロと結婚した俺を諦めきれず
家にちょくちょく遊びに来る。そのたびに弓を教わっていたため
今ではアリス以上の弓の使い手だ。
フェニックスは腐食により羽が抜け落ちる。
それを全て拾い集めるリリーに対し、息子のロレンスは
ハンマーで懸命に頭を叩く。だが堅いせいか弾かれて
ばかりだった。ハンマーの師匠はロードスだが
教えている最中でいつも逃げ出すので上達しない。
フェニックスは怒りをあらわにし姿を豹変させた。
全身をオリハルコン級の素材で固めたことにより
金色に輝いて見える。奴の姿がよろめいた
かと思った時にはすでに遅く俺の身体にフェニックス
の爪が襲いかかっていた…