魔龍人31~35

 

 三十一話
 
吹雪が激しい中、弓の音は岩を砕く音でかき消されていた
視界が悪く、モンスターたちがどんどん湧く中、その2人は戦っていた
雪の玉がアーザを巻き込みながら、岩にぶつかる
雪崩が起きてアーザを押しつぶすとともに、飛びかかる
雪の中から弓が放たれそのものの目に突き刺さる
奴はのけぞるが悪魔でもひるんだだけだった
奴の咆哮が響くとともに周りの雪が押しつぶされるように縮まる
「ギャオーーーーー」
その声はまさに鬼・・・いや、死の声だ
アーザは見たことのないモンスターに苦戦する
頭はまるで恐竜・・・その獰猛さは頭だけで充分伝わる
翼のついた手・・・ほぼ翼に近い
黄色と青が奴を鬼人の色と化す
長い尻尾・・・青い目・・・鋭い牙が並んだ口
その瞬間からやつは眼の色を変える・・・赤・・・
アーザは弓を構える・・・これが最後と覚悟して
弓が放たれたと同時に奴もこちらに向かって突進する
「こんなのあり?」
アーザの第一発言であり、奴の攻撃をかわした時だった
雪玉を投げつけ、弓の攻撃範囲が制限され、さらに近づき突進をくらわす
長い時間戦っただけあってアーザも呼吸が荒くなる
「ハァハァ・・・」
もはや息をしないと凍えて死ぬ・・・この場所で
「いくわよ・・・これでこの勝負がつく」
アーザが走り出す、奴もそれがわかり「ギャオーーーー」と激しい咆哮を放ち向かってきた
何度も弓が奴の体に当たるが、その傷は浅い・・・・
アーザは吹き飛ばされた・・・弓が奴の翼で砕かれる
「ごめんなさい・・・待ってあげれなくて」
それを言うとアーザは眼を閉じる
モンスターはアーザが気を失ったことを確認すると近づいていく
「バッン」
銃声が響いた・・・・音のもとは奴の後ろだった
奴の体を貫通し岩をも砕く
女は近寄りアーザを抱いた
「遅くなって済まない・・・私がもう少し修行を早く終わらせていれば」
ハサは目に涙を浮かべる
吹雪が激しく2人を包みこんでいった
 
三十二話
 
そのころ、森丘にいた2人はキャンプの近くにいた・・・ちょうどエリア2だ
セツナはコノカの手を握りながら走って連れていく
「どないしたん?セッチャン」
答える暇がなかった・・・そのモンスターが2人の前に現れたから・・
一見何もいないように見える・・・鳥たちは草の近くでセツナ達を見ていた
が一匹が何もない所に吸い込まれる
太陽の光が反射し、無残な鳥の姿・・・そして、古龍の姿があった
「嫌や」
コノカは眼をそむけ、顔を両手で覆うとともに涙を流す
セツナは知っていた・・・一時的に姿を隠すモンスターがいることを
幼いコノカを狙ったことがある相手だから覚えている
セツナは深く息を吸ったが、顔は怒ってるようだった
「出たな!古龍種・オオナズチ!」
セツナの口調が激しいので、オオナズチは一瞬それにひるんだ
だが、再び姿を消して風圧で砂埃を立てた
「逃げる気か!?」
だが、奴はセツナの後ろにいた・・セツナには見えてない
ナズチは思いっきりの笑みを浮かべ、殴ってきた
「グハァ」
セツナは左腕に激しい感触を覚える暇さえなかった
左腕を抑えながら鞘に右手をかける
「セッチャンに何するんや!?ゆるさへん」
コノカは双剣を抜き出して切りつける
「ガーン」はじかれる音がした瞬間に毒煙が舞う
「いやぁ」
コノカは吹き飛ばされて気を失う
セツナは怒りの表情のまま、切りかかった
顔を集中的に切り、攻撃できないようにした
オオナズチはのけぞりながら、岩にぶつかった
岩が崩れて砂煙が舞う・・・晴れるとオオナズチはいなくなっていた
いや、いなくなったのではない・・・姿を消したのだ
「クソッ」
セツナは片膝を地面につける・・・痛みが取れない
そうしてる間にナズチのブレスが円を描きながら飛んでくる
(私はこんな所で・・・・お嬢様お許しを)
セツナは眼をつぶる、溶かされるのか?砕かれるのかも分らず
だが、攻撃が当たらない・・・眼を開けるとそこには1人の少女がいた
「サンザキ!何故お前が!?」
サンザキという少女は鞘から太刀を抜く、もちろんナズチはブレスを吐く
「派手にやられたな・・・・十竜剣・葬火山!」
椿の花が火をまといながらナズチにあたる
ナズチは苦しみだしたのを見たサンザキはセツナのほうを向き
「今だ!」
セツナは立ち上がり、炎で焼かれてるナズチに向かって刃を向ける
「お嬢様に手出しした事・・後悔しろ!百烈桜華啖!」
桜がナズチを円状に取り囲み、切り刻む
ナズチは息もしないまま倒れる
「再」
サンザキは鳥の死体に向かって、呪文を唱えた
「チュンチュン」鳥は何事もなかったように大空飛び立つ
花が風にゆれながら、それを見ていた
 
三十三話
 
一方、セルメンはランゴスタの大群とその女王と戦っていた
「ブーン」
ランゴスタ達が飛び交う・・羽根の音は休まなかった
セルメンを大群が針で突き刺していくため、体がもつはずがない
「1回・・ほかの場所に行くか・・」
モドリ玉を投げて、その場を離れた
キャンプに戻り、自分で治療する
傷をある程度直した・・そこらへんに薬草がこぼれる
傷がいえない中、さっきの場所に行った
ランゴスタ達は「また来たのか」とでも言いたげな顔をする
女王、ランゴスタのクイーンは人間には理解不能な声を出した
「ブーン」
もはや、羽根の音でほとんど聞き取れないが、一斉にランゴスタが近づいてきた
大剣を構えたときには目の前に300匹ほどのランゴスタがいた
「おぉらぁーーー」
目の前のランゴスタを秒殺したが、またほかの場所から湧き出てくる
「どうやら、あのでっかいのをどうにかしねぇといけないようだな・・」
セルメンの発言にこたえるかのようにまた奇妙な音を出す
まるで、「受けて立とう」とでも言いたげに・・・
その瞬間、ランゴスタ達が一斉に引いた・・・ステージ型に
「なるほど・・・逃がさず、逃げずか・・・・」
クイーンランゴスタは突然構えたのでセルメンはガードした
黄色い液体が大剣に降りかかり、周りに生えていた草は跡形もなく溶けた
「酸性の液体か・・・・・やっかいだな・・」
クイーンランゴスタはそれを何回もやってくる
セルメンは横に回避して、クイーンランゴスタの羽の近くに来る
大剣を思いっきり横からたたきつける・・・
クイーンランゴスタの顔が赤くなった!
その瞬間、さっきまでステージを形づくっていたランゴスタ達が一斉に向かってきた
「グサッグサッ、グサッグサッグサッ・・・・・」
次々とセルメンの体を毒針を刺す・・・セルメンはまだ意識があった
クイーンランゴスタは「よく戦った」とでも言いたげに近寄ってきた
「ブシュッ」
セルメンの喉元をクイーンランゴスタの針が貫く
そして、針を抜くとそこからは大量の血が噴き出した
ランゴスタ達は一斉に下がったが、クイーンランゴスタは体を持ち帰ろうとしていた
セルメンの体は地面にぶつかるが、それは痛みもなく、意識も薄れていった
「セルメン!」
二人の男女がそこに駆け付けた
ガーナとアスナだったが、セルメンの体をクイーンランゴスタが見せるように持ち上げた
アスナは怒りのあまり大剣を思いっきりクイーンランゴスタにたたきつける
アナスが切った瞬間に勝負は決まった・・ランゴスタの女王は真っ二つになった
「こんなんじゃ・・・・・こんなはずじゃ・・・・・」
ガーナは戸惑う・・・涙が眼に溜まる
「しっかりしなさいよ、お子ちゃま!とにかく村に急いで連れて帰りましょ」
ガーナは頷き、村の方向に全速力で向かった
 
三十四話
 
そんな中、樹海でも激しい戦いが始まっていた
黒い毛をまとった迅竜はカエンを集中的に狙った
「こんなんじゃ、演奏どころか攻撃もできないよぉ~」
カエンが泣き言をいうが、レッグも同じ気持ちだった
だが、ここであきらめたら他で戦っているやつに申し訳ないと思った
ハンマーを振り回すものの、なかなか当たらない
「あきらめるな!他のやつだってこんだけの相手と戦ってるんだ」
レッグの怒りを含めた声にカエンは納得するしかなかった
数時間前からいろいろな手を尽くした
閃光玉で隙を作ろうとしたが、奴はかえって暴れまわる
シビレ罠を仕掛けて誘い込んだがすぐに抜けられ、ろくに攻撃できない
落とし穴も奴は仕掛けてあるのをかわして俺たちを攻撃してくる
音爆弾も返って奴を怒らせてしまう
カエンも演奏で援護しようとするが、迅竜の素早い攻撃によりできなかった
笛もボロボロになってしまい、無残な姿になっている
数時間前までいた小型モンスターたちも迅竜の手に落ちた
「名だけではないみたいだな・・・迅竜・ナルガクルガ!」
レッグがナルガクルガに向かって叫ぶと奴もこちらを睨みつけた
「ガァオーーーーン」
奴の咆哮が樹海に響き渡るとともに、俺達の耳をつんざく
がその場にはもういなかったやつはレッグの後ろに移動して素早く切りつける
「グッ」
レッグが吹き飛ばされる中、カエンはおびえた
ナルガクルガはカエンに視線を移して、消えた
カエンにどこかに行ったという安心感と襲ってくるという恐怖が両方湧いた
その瞬間にナルガクルガはカエンの目の前に出てきて針を飛ばした
「オォーノォーー」
カエンが池の中に落とされた瞬間、魚たちが奥底に逃げていった・・
ナルガクルガは辺りを見渡したが、どこかにいったと感じその場を離れようとする
「待て!」
ナルガクルガは辺りを見渡し、後ろに誰かがいるのがわかった
振り向いた瞬間、「ブサッ」と剣がナルガクルガの頭を突き刺す
レッグとカエンは起き上がりその光景を見た
「レクエム・・・来てくれたのか・・」
レッグの言葉にレクエムは笑みを浮かべるように頷いた
3人は樹海を後にする
火山ではヒダカがランスでひたすらガードしながら耐えていた
帝王達の炎はランスの厚い盾さえ溶かしていく
(もうだめなのか!?じい様みたいなハンターに俺はなれないのか?)
盾がなくなった・・・2体が突進してくる
その瞬間、2つの人影が!
「アイ」
小柄な少女が素手で1体を吹き飛ばす・・よく見れば手に何か武器のようなものをつけている
ナナ・テスカトリはその場で息絶えた
テオ・テスカトルが怒りの表情で突進してきたが無駄だった
テオ・テスカトルはその場に倒れた・・ほんの数分で
見渡すと2人の少女はいなくなっていた
村に戻ることにした
 
三十五話
 
村にはハンター達が戻ってきている中、救急治療室で大手術が始まっていた
それも2名・・・アーザとセルメンだ
アーザは傷と凍傷で済んだものの、セルメンは大量出血、毒などがあってか息すらしてない
カエン・レッグ・セツナ・コノカは軽い傷で済んだものの心の傷が増えた
ガーナ・アナス・レクエム・そして初めて会うヒダカは待つことしかできなかった
ー数時間後ー
医師がでてきた、この村の有名な医師だ
「手術は終わりました。ただ、セルメンさんの傷はとても私では・・・」
その言葉がガーナの胸に突き刺さる
「俺がもっと早くいってやれば・・・・」
周りが暗い雰囲気で包まれる・・・パーティの1人が死ぬ・・・そう考えるとつらかった
サンザキがそこに来た・・・・セツナは顔をあげる
このオカザミ家、秘伝の薬をつかます・・
そういうと手術室に入るとともに手術室から光が出た
「何だ!?」
全員がそういう気持ちでいくと、医師は驚いた
なんと2人とも呼吸をしているではないか!
「いったいどうやって?」
「言えません」
そう医師に言った後、ガーナのほうをサンザキは向いた
「ガーナさん・・・またどこかで会いましょう」
そのあとに、セツナのほうを向く
「セツナ・・・・今度は気をつけて」
そう言うと彼女は外に出ていった
村の雰囲気がさらに明るくなった瞬間だった
 

 

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